イベントや動画制作で日本の国歌である君が代を使いたいと考えたとき、著作権や利用料がどうなっているのか気になったことはないでしょうか。
有名な曲だけにJASRACへの申請が必要なのか、それともフリー素材のように扱ってよいのか、判断に迷う場面があるかもしれません。
特にYouTubeへの投稿や学校行事での利用を検討している場合、後から権利侵害の指摘を受けるのは避けたいところです。
この記事では、君が代の歌詞やメロディの法的状況と、音源を利用する際に気をつけたいポイントについて整理します。
君が代の利用可否は、大きく「歌詞・旋律(著作権)」「編曲(新たな著作権が生じる可能性)」「録音物(著作隣接権)」を分けて確認すると、判断が速くなります。
- 君が代の歌詞と旋律がパブリックドメインである法的根拠が分かります
- JASRAC管理楽曲として表示される理由とアレンジ版の扱いを区別できます
- 市販のCDや配信音源を利用する際に発生する著作隣接権について学べます
- 自分で演奏する場合と音源を利用する場合のルールを明確に整理できます
君が代の著作権は消滅?法的ステータス

まず、君が代という楽曲そのものが現在どのような権利状態にあるのか、基本的なルールを確認しておきましょう。
歌詞、メロディ、そして編曲(アレンジ)という要素ごとに分けて考えると、状況がすっきりと見えてきます。
歌詞と旋律はパブリックドメイン
結論から言えば、君が代の「歌詞」と「旋律(メロディ)」については、著作権の保護期間が満了しており、いわゆるパブリックドメインの状態にあるとされています。
著作権の保護期間は原則として「著作者の死後70年」(例外あり)とされ、期間満了後は許諾なく利用できる範囲が広がります。
歌詞の元となっているのは、平安時代の『古今和歌集』に収録された「詠み人知らず」の和歌です。
1000年以上前の作品であるため、現代の著作権法が適用される余地はなく、誰でも自由に利用できる共有財産といえます。
また、現在歌われている旋律についても、明治時代に宮内省の奥好義や林廣守らによって選定されました。
彼らが亡くなってからすでに70年以上が経過しているため、メロディ自体の著作権も消滅していると判断するのが一般的です。
したがって、オリジナルの楽譜を元に自分で演奏したり、歌詞を掲載したりすること自体には、権利者の許諾は不要と考えられます。
君が代はJASRACの管理外楽曲か
「君が代は著作権が切れているなら、JASRAC(日本音楽著作権協会)とは無関係なのではないか」と考える方も多いでしょう。
実際、オリジナルの君が代(原曲)については、JASRACの管理楽曲ではありません。
そのため、原曲をそのまま演奏したり歌ったりする場合において、JASRACへの使用料支払い義務は発生しないという整理になります。
原曲の「歌詞」と「メロディ」をそのまま利用する限り、JASRACへの申請や使用料の支払いは不要とされています。
しかし、JASRACのデータベースで検索すると「君が代」というタイトルがヒットすることがあります。
これが混乱を招く一因となっているようですが、その理由は次の項で詳しく解説します。
著作権フリーと有料素材の違い
インターネット上で「著作権フリー」と謳われている素材や、有料で販売されているBGM素材を見かけることがあります。
これらは「権利が消滅している」という意味とは少し異なる場合があるため注意が必要です。
有料のBGM販売サイトなどで扱われている君が代は、クリエイターが新たに制作した音源であることがほとんどです。
この場合、「楽曲(メロディ)」はパブリックドメインであっても、その「音源データ」や独自に加えられた「アレンジ」に対して、販売者がライセンス料を設定しているケースといえます。
つまり、お金を払う理由は「昔の著作権料」ではなく、「今のクリエイターへの対価」や「音源利用のライセンス料」であると理解しておくとよいでしょう。
なお、「ロイヤリティフリー」と書かれていても、無条件で自由に使えるという意味ではなく、用途・媒体・再配布可否などの条件が定められているのが一般的です。
権利保護期間の満了と著作者の死没
日本の著作権法では、著作物の保護期間は原則として「著作者の死後70年」と定められています。
君が代に関わった人物の没年を確認してみましょう。
作詞・作曲の関係者や経緯まで整理したい場合は、作者・関係者の情報を先に押さえると判断がしやすくなります。
- 作詞
古今和歌集(平安時代)に由来するため不明(保護期間満了) - 作曲(旋律)
林廣守(1896年没)、奥好義(1933年没)など - 編曲(和声)
フランツ・エッケルト(1916年没)
現在よく知られている四声体のハーモニー(和声)を付けたドイツ人音楽家、フランツ・エッケルトも1916年に亡くなっています。
ここから計算すると、彼の編曲に関する権利も1986年末の時点で期間が満了していることになります。
著作権の保護期間は改正で変遷しているため、満了時期の表記が計算前提によってぶれることはありますが、いずれにせよ現時点では保護期間外と整理されます。
この事実関係から、現在私たちが耳にする標準的な君が代は、歌詞・旋律・和声のすべてにおいて、著作権保護期間が終了していると判断して差し支えないでしょう。
編曲されたアレンジ版には権利が発生

ここで一つ重要な例外があります。
それは、原曲に新たな創作性を加えた「アレンジ版(編曲版)」についてです。
もし現代のアーティストや作曲家が、君が代をロック風やジャズ風、あるいは独創的なオーケストラアレンジに再構成した場合、その「アレンジ部分」には二次的著作物としての新たな権利が発生します。
JASRACのデータベースに登録されている君が代の多くは、こうした特定のアレンジャーによる編曲版であると考えられます。
もし、特定のアーティストが編曲したバージョンを演奏や録音で利用したい場合は、その編曲者の許諾やJASRACへの手続きが必要になる可能性があるため、利用する楽譜や音源が「原曲」なのか「現代のアレンジ版」なのかを確認することが大切です。
楽譜の場合は、表紙やクレジットに「編曲(arr.)」の表記や編曲者名があるか、音源の場合は配信ページやCDブックレットにアレンジャー表記があるかを見ておくと切り分けがしやすくなります。
原曲に近い楽譜の探し方や、編曲譜を使うときの見分け方は次の記事が参考になります。
君が代の著作権リスクと安全な利用法

楽曲自体がパブリックドメインであっても、「音源」を利用する際には別の権利が関わってきます。
ここからは、CDや配信音源を使う際のリスクと、安全に利用するための具体的な方法について見ていきましょう。
市販CDの音源にある著作隣接権

「著作権は切れているから、手持ちのCDを動画のBGMに使っても大丈夫だろう」と考えるのは、著作権法上リスクが高い行為といえます。
なぜなら、楽曲(著作権)とは別に、音源には著作隣接権という権利が存在するからです。
著作隣接権は、その音楽を演奏した「実演家(歌手、演奏者、指揮者)」や、CDを制作した「レコード製作者(レコード会社)」に与えられる権利です。
この権利も、実演や発行から一定期間保護されます。
現在市販されているCDや配信されている音源の多くは、比較的最近録音されたものです。
そのため、楽曲自体は古くても、その「録音された音」についてはレコード会社や演奏家が権利を持っているケースがほとんどです。
これらを無断でコピーしたり、動画サイトで公開したりする行為は、著作隣接権の侵害になる可能性があるため注意が必要です。
YouTubeや商用利用での注意点
YouTubeなどの動画投稿サイトや、企業のプロモーションビデオなどの商用利用で君が代を使いたい場合、音源の選び方が重要になります。
前述の通り、市販のCD音源をそのまま使うと、YouTubeのシステム(Content IDなど)によってブロックされたり、収益化が制限されたりすることがあります。
これはレコード会社が著作隣接権を管理しているためです。
安全に利用するためには、以下のいずれかの方法を検討するのが一般的です。
- 権利関係がクリアな素材を使う
AudioStockなどの素材サイトで、商用利用可能なライセンスを購入する。 - 公式に許可された音源を使う
アーティストが「自由に使ってよい」と明言して配布している音源を利用する(利用規約の範囲内で)。 - 自分で制作する
次の項で解説します。
迷ったら、次の確認だけは先に終えるとトラブルを避けやすいです。
「著作権フリー」と書かれていても、商用利用には別途契約が必要な場合や、クレジット表記が必須の場合があります。利用規約を必ず確認しましょう。
学校行事やスポーツ大会でのBGM
入学式や卒業式、運動会などの学校行事において、市販のCDを流すことは認められるのでしょうか。
著作権法第35条や第38条では、教育機関での利用や、営利を目的としない演奏について例外規定が設けられています。
これにより、学校の授業や、入場料を取らない学校行事で音楽を流すことは、一定の条件下で認められると解釈されることが多いです。
ただし、JASRACなどの管理団体は「市販のCDなどを利用する場合は、著作隣接権者の了解も必要」という見解を示すことがあります。
特に、行事の様子を録画してインターネットで配信する場合や、DVDとして配布する場合などは、「複製」や「公衆送信」にあたるため、教育現場の例外規定の範囲外となる可能性があります。
会場で流すだけの「演奏」と、録画・配信・配布を伴う「複製/公衆送信」は扱いが分かれやすいため、どこまで行うかを先に切り分けておくことが重要です。
行事での生演奏や斉唱であれば、楽曲がパブリックドメインであるため問題になることはほぼありませんが、音源の利用については慎重な判断が求められます。
最終的な判断は教育委員会や専門家にご確認ください。
自分で演奏した音源なら自由に使える

最も安全かつ自由に君が代を利用する方法は、「自分で演奏・制作すること」です。
原曲の著作権は消滅しているため、自分でピアノを弾いたり、DTM(デスクトップミュージック)で打ち込んだり、合唱したりして作った音源であれば、その音源の権利(著作隣接権)はすべてあなた自身が持つことになります。
この自作音源であれば、YouTubeへのアップロード、商用映像へのBGM利用、さらには素材としての配布も、誰の許可も得ることなく自由に行うことが可能です。
ただし、第三者が作った独自アレンジ(編曲譜・配布MIDI・伴奏音源など)を取り込むと、その部分の権利確認が別途必要になる可能性があります。
「権利関係を完全にクリアにしたい」と考えるなら、自作音源の使用が最も確実な選択肢といえるでしょう。
音楽素材サイトの規約とライセンス
自分で演奏するのが難しい場合は、ロイヤリティフリーの音楽素材サイトを利用するのが現実的な解決策です。
こうしたサイトで販売されている「君が代」の音源は、制作者が二次的著作物としてアレンジし、その使用権を販売しているものです。
購入者は、サイトの規約(ライセンス)を守る限りにおいて、著作権侵害を心配することなく利用できます。
ただし、購入したからといって「何でもしてよい」わけではない点には注意が必要です。
たとえば、「音源そのものを再配布する行為」や「公序良俗に反するコンテンツでの使用」などは禁止されていることが一般的です。
よくある質問:君が代の著作権と音源利用
- Q君が代をYouTubeで歌って投稿するだけなら許可は必要ですか?
- A
自分の歌唱・演奏を自分で録音した音源なら、原曲の著作権の点では許可不要と整理されます。ただし、市販音源の流用や第三者の編曲・伴奏を使うと、別の権利が関わる可能性があります。
- Q学校行事で市販CDを流すのは違法になりますか?
- A
会場で流すだけの利用は例外規定の解釈が関わることがあり、ケースごとに整理が必要です。録画して配布・配信する場合は「複製/公衆送信」に当たり得るため、別途確認が必要になります。
- Q「著作権フリー」の君が代音源なら商用でも何でも使えますか?
- A
一般に「追加料金なしで使える」という意味で使われることがありますが、無条件を意味しない場合があります。商用可否、クレジット要否、再配布禁止などの条件は必ず規約で確認してください。
まとめ:君が代の著作権を正しく把握

君が代の利用に関するルールは、「楽曲(メロディ・歌詞)」と「音源(CD・データ)」を分けて考えるとシンプルに理解できます。
楽曲そのものはパブリックドメインであり、歌ったり演奏したりすることは自由です。
一方で、市販のCD音源や特定のアレンジ版には、著作隣接権や二次的著作物としての権利が残っている可能性が高いため、無断利用は避けたほうが無難です。
自身の利用シーンに合わせて、自作音源を用意するか、適切なライセンスを取得するかを検討してみてください。
権利を正しく理解することで、安心して国歌を扱うことができるはずです。




