オーストラリア国歌について詳しく知りたいと思っていませんか。
この国歌の名前の由来や詳しい歴史、そして歌詞の意味や日本語訳、歌うためのカタカナ表記に関心がある方も多いでしょう。
また、なぜ歌詞が変更されたのか、その理由や、もう一つの有名な歌であるマチルダとの関係性、さらには国歌の特徴や作曲家、楽譜の入手方法も気になるところです。
この記事では、世界で一番古い国歌や、世界で一番国歌が長い国はどこか、といった豆知識も交えながら、オーストラリアの国歌を深く掘り下げていきます。
- オーストラリア国歌の歴史や名前の由来がわかる
- 公式な歌詞の意味や日本語訳、カタカナ表記がわかる
- 歌詞が変更された理由や背景がわかる
- ライバル曲『ワルチング・マチルダ』との関係性がわかる
オーストラリア国歌の基本情報と歴史

- 国歌の名前とその由来
- 国歌制定までの詳しい歴史
- 国歌を作った作曲家は誰?
- もう一つの候補ワルチング・マチルダ
国歌の名前とその由来

オーストラリアの国歌の正式名称は、『Advance Australia Fair』(アドヴァンス・オーストラリア・フェア)です。
このタイトルは、日本語では「進め、美しのオーストラリア」と訳されることが多く、国の発展と美しさを讃える愛国的な思いが込められています。
この曲が作られた19世紀後半、オーストラリアはイギリスの植民地から一つの連邦国家へと歩みを進める重要な時期にありました。
そのため、「オーストラリアよ、前進せよ」という力強いメッセージが、国民の心を捉えたのです。
「Fair」という単語には「美しい」や「公正な」といった意味合いがあり、オーストラリアの豊かな自然や、公正な社会を築こうとする理想を表現しています。
このように、国歌の名前には、国の未来への希望と国民としての誇りが反映されているのです。
国歌制定までの詳しい歴史

『Advance Australia Fair』が国歌として正式に制定されたのは1984年ですが、そこに至るまでには100年以上の長い歴史がありました。
もともと、オーストラリアではイギリス国歌『女王陛下万歳』が公式な場で歌われていました。
しかし、独自の国歌を求める声が次第に高まっていきます。
1973年には国歌選定のためのコンペティションが開催されますが、新たな曲は選ばれず、既存の愛国歌3曲から選ぶことが勧告されました。
そして1977年、国歌を選択するための国民投票が実施されます。
この投票結果が、国歌決定の大きな転機となりました。
国歌候補 | 支持率 |
---|---|
Advance Australia Fair | 43.6% |
Waltzing Matilda | 28.5% |
God Save the Queen | 18.7% |
Song of Australia | 9.7% |
このように、『Advance Australia Fair』は圧倒的な支持を得ました。
この結果を受け、いくつかの歌詞の修正を経た後、1984年4月19日にボブ・ホーク政権によって正式に国歌として宣言されたのです。
国歌を作った作曲家は誰?

オーストラリア国歌『Advance Australia Fair』を作詞・作曲したのは、ピーター・ドッヅ・マコーミック(Peter Dodds McCormick)という人物です。
彼は1834年にスコットランドで生まれ、1855年にオーストラリアのシドニーへ移住しました。
学校の教師を務める傍ら、教会の聖歌隊を指導するなど、音楽活動にも精力的に取り組みました。
マコーミックがこの曲を創作したきっかけは、あるコンサートで各国の国歌が演奏される中、オーストラリアを代表する歌が一つもないことに憤りを感じたことでした。
その帰り道、バスの中で第1節を書き上げたと伝えられています。
1878年に初めて公の場で演奏されると、瞬く間に人気を博しました。
彼の功績は政府にも認められ、1907年には100ポンドが授与されています。
もう一つの候補ワルチング・マチルダ

オーストラリアには、『Advance Australia Fair』と並んで国民に深く愛されている『ワルチング・マチルダ』(Waltzing Matilda)という歌があります。
この曲は、国歌選定の国民投票でも28.5%の票を集めるなど、非常に高い人気を誇ります。
この歌は、放浪の労働者(スワッグマン)が羊を盗んで食べた後、警察から逃れるために入水自殺するという内容です。
歌詞だけを見ると国歌にはふさわしくないと感じるかもしれません。
しかし、オーストラリアの人々は、この歌の登場人物が持つ権威への反骨精神や、厳しい自然の中で生きる労働者のたくましい姿に、自国の国民性を重ね合わせてきました。
そのため、国歌には選ばれなかったものの、今でもスポーツの国際大会など、さまざまな場面で『ワルチング・マチルダ』が歌われています。
多くの人にとって、この歌は「非公式な国歌」として特別な存在であり続けているのです。
オーストラリア国歌の歌詞と豆知識

- 歌詞に見られるオーストラリアの特徴
- 歌詞の日本語訳と詳しい意味
- 歌いやすい歌詞のカタカナ表記
- 歌詞が変更されたのはなぜ?
- 国歌の楽譜はどこで手に入る?
- 世界で一番古い国歌と長い国歌
- まとめ:オーストラリア国歌を深く知ろう
歌詞に見られるオーストラリアの特徴

オーストラリア国歌の歌詞には、この国の地理的、文化的な特徴が色濃く反映されています。
豊かな自然と資源
第1節には「We’ve golden soil and wealth for toil(労苦に代わる黄金の土地と富を持つ)」という一節があります。
これは、ゴールドラッシュの歴史や、現在も続く鉱物資源の豊かさを象徴しています。
また、「Our home is girt by sea(我らが故郷は海に囲まれ)」という歌詞は、大陸国家であるオーストラリアの地理的な特徴を端的に示しています。
移民国家としての一面
第2節の「For those who’ve come across the seas, We’ve boundless plains to share(海を渡ってきた人々と、限りない平原を分かち持つ)」という歌詞は、オーストラリアが移民を積極的に受け入れてきた歴史と、多文化主義を尊重する姿勢を表しています。
南半球の象徴
同じく第2節に登場する「Beneath our radiant Southern Cross(眩いばかりの南十字星のもと)」というフレーズも重要です。
南十字星は南半球を代表する星座であり、オーストラリアの国旗にも描かれている国民的なシンボルです。
この星の下で国民が団結することが歌われています。
歌詞の日本語訳と詳しい意味

オーストラリア国歌は公式には2番まであります。
ここでは、原文の歌詞とその日本語訳、そしてカタカナでの読み方を紹介します。
節 | 英語公式歌詞 | 日本語訳 |
---|---|---|
1番 | Australians all let us rejoice, For we are one and free; We’ve golden soil and wealth for toil, Our home is girt by sea; Our land abounds in Nature’s gifts Of beauty rich and rare; In history’s page, let every stage Advance Australia fair! In joyful strains then let us sing, “Advance Australia fair!” | 全てのオーストラリア人よ 喜ぼう 我らは一つで自由 労苦に代わる黄金の土地と富を持つ 我らが故郷は海に囲まれ 大地は自然の恵みに溢れんばかり 豊かで稀有な美しき自然 歴史のページのあらゆる舞台に 美しのオーストラリアよ 進め! 楽しい調べで さあ歌おう 「進め 美しのオーストラリア!」 |
2番 | Beneath our radiant Southern Cross, We’ll toil with hearts and hands; To make this Commonwealth of ours Renowned of all the lands; For those who’ve come across the seas We’ve boundless plains to share; With courage let us all combine To advance Australia fair. In joyful strains then let us sing “Advance Australia fair!” | 眩いばかりの南十字星のもと 我ら全身全霊を捧げ働く 我らが連邦国家をば取り分け 名だたる国とするために 我ら海を渡ってきた人々と 限りない平原を分かち持つ 勇気を持って団結しよう 美しのオーストラリアへ進むため 美しい調べで さあ歌おう 「進め 美しのオーストラリア!」 |
歌いやすい歌詞のカタカナ表記

英語の歌詞を歌うのが難しいと感じる方のために、カタカナでの読み方を併記します。
発音の参考にしてください。
節 | カタカナでの読み方 |
---|---|
1番 | オーストレイリアンズ オール レット アス リジョイス フォー ウィー アー ワン アンド フリー ウィーヴ ゴールデン ソイル アンド ウェルス フォー トイル アワー ホーム イズ ガート バイ シー アワー ランド アバウンズ イン ネイチャーズ ギフツ オブ ビューティー リッチ アンド レア イン ヒストリーズ ページ レット エヴリ ステージ アドヴァンス オーストラリア フェア イン ジョイフル ストレインズ ゼン レット アス シング アドヴァンス オーストラリア フェア |
2番 | ビニース アワー レイディアント サザン クロス ウィール トイル ウィズ ハーツ アンド ハンズ トゥ メイク ディス コモンウェルス オブ アワーズ リナウンド オブ オール ザ ランズ フォー ゾーズ フーヴ カム アクロス ザ シーズ ウィーヴ バウンドレス プレインズ トゥ シェア ウィズ カレッジ レット アス オール コンバイン トゥ アドヴァンス オーストラリア フェア イン ジョイフル ストレインズ ゼン レット アス シング アドヴァンス オーストラリア フェア |
歌詞が変更されたのはなぜ?

オーストラリア国歌の歌詞は、時代に合わせて何度か変更されています。
主な変更は、男女平等と先住民への配慮という2つの大きな理由によるものです。
1984年の変更(男女平等)
国歌として正式に制定された際、元の歌詞にあった「Australia’s sons let us rejoice(オーストラリアの息子たちよ、喜ぼう)」という部分は、「Australians all let us rejoice(全てのオーストラリア人よ、喜ぼう)」に変更されました。
これは、歌詞を男女平等な表現にするための修正でした。
2021年の変更(先住民への配慮)
2021年1月1日には、さらに重要な変更が行われました。
第1節の歌詞が以下のように修正されています。
変更箇所 | 旧歌詞 (~2020) | 新歌詞 (2021~) |
---|---|---|
第1節2行目 | For we are young and free (我らは若くて自由) | For we are one and free (我らは一つで自由) |
この変更の理由は、先住民族であるアボリジナルやトレス海峡諸島民の長い歴史に敬意を払うためです。
「young(若い)」という言葉が、イギリスからの入植以降の歴史しか認めていないと解釈される可能性があったからです。
国を「one(一つ)」と表現することで、6万年以上にわたる先住民の歴史を含む、すべての国民の統合を象徴する狙いがあります。
国歌の楽譜はどこで手に入る?

オーストラリア国歌の公式な楽譜や音源は、オーストラリア政府の公式サイトで無料で公開されています。
様々な編成(オーケストラ、バンド、ピアノ、合唱など)の楽譜がPDF形式でダウンロードできるため、学校教育や公式なイベントなどで使用することが可能です。
興味のある方は、以下のリンクからアクセスできます。
Australian National Anthem(オーストラリア首相・内閣府)
利用規約も同ページに記載されていますので、商業目的で使用する際は事前に確認することをおすすめします。
世界で一番古い国歌と長い国歌

ちなみに、オーストラリア以外の国歌に目を向けてみると、興味深い記録があります。
世界で一番古い国歌
世界で最も古い国歌は、一般的に日本の『君が代』とされています。
歌詞の元となった和歌は平安時代(10世紀頃)の作品であり、世界最古の歌詞を持つ国歌です。
ただし、現在のメロディが付けられたのは1880年(明治13年)です。
世界で一番長い国歌
世界で最も長い国歌は、ギリシャの『自由への賛歌』です。
この曲は全部で158番まであり、全てを歌うと1時間近くかかると言われています。
そのため、公式な場では通常、最初の2番までが歌われます。
オーストラリア国歌は2番までと比較的標準的な長さですが、こうした世界の国歌と比較してみるのも面白いかもしれません。
まとめ:オーストラリア国歌を深く知ろう

この記事では、オーストラリア国歌に関する様々な情報をお届けしました。
最後に、記事の要点をリストで振り返ります。
- 国歌の正式名称は『Advance Australia Fair』
- 日本語訳は「進め、美しのオーストラリア」
- 作詞作曲はスコットランドからの移住者ピーター・ドッヅ・マコーミック
- 1878年に創作され、1984年に正式な国歌となった
- 制定前はイギリス国歌『女王陛下万歳』が使用されていた
- 1977年の国民投票で圧倒的な支持を得て国歌候補の筆頭になった
- ライバル曲として『ワルチング・マチルダ』が今も国民に愛されている
- 歌詞には豊かな自然や資源、移民国家としての一面が描かれている
- 南半球の象徴である「南十字星」も歌詞に登場する
- 歌詞は過去に複数回変更されている
- 1984年の変更は男女平等の観点から行われた
- 2021年には先住民の歴史に配慮し「young」が「one」に変更された
- 公式な楽譜や音源はオーストラリア政府のサイトで入手可能
- 世界最古の国歌は日本の『君が代』、最長はギリシャの『自由への賛歌』
- オーストラリア国歌は国の歴史と多文化主義を象徴する歌である